胃がんについて
胃にできる悪性腫瘍のことを胃がんといいます。がんの中でもっともよく耳にするのが胃がんではないでしょうか。胃がんは、日本人のがんの中で、一番多かったがんです。多かったというのは、胃がんは近年減少傾向で、肺がんが増加しているため、一番多いがんは、肺がんになりました。さらに、大腸がんが増えており、男性では、この数年で、胃がんをぬいています。このように、以前ほど多くはありませんが、死亡者数は、年間3万人を数え、まだまだ大きな影響があります。
(出典)国立がん研究センターがん情報サービス「人口動態統計によるがん死亡データ( 1958年~ 2013年)
診断
胃がんの診断は、胃X線検査や胃カメラで行います。胃がん検診や胃痛などのおなかの症状がある方が、検査を受けます。胃X線検査で異常が見つかった場合、やはり胃カメラにて精密検査を行います。検査にて、胃に何らかの病変が見つかった時、生検(病変の一部の組織を採取すること)を行い、組織検査をして、がんがどうか確定します。
がんの進行度
がんの進み具合により、早期がんと進行がんに分かれます。その違いは、胃の壁にどれくらいがん細胞が拡がっているかによります。胃は、5層からなっており、内側から、粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜です。がん細胞が、粘膜下層までに存在するものを早期がん、それより、深く、筋層以上に進行しているものを進行がんといいます。
また、がんの組織形も治療法を決めるために重要です。組織の検査をして、その結果、高分化なものと未分化なものに分かれます。高分化のものは、かたまって発育していく性質がありますが、未分化のものは、パラバラとがん細胞が散らばっていくような発育をします。高分化なもののようにかたまって発育すれば、がんの範囲がわかりやすくて、内視鏡切除に適していますが。未分化なもののように、散らばって発育する場合は、がんの範囲がはっきりせず、予想以上に、広範囲に発育していたりします。このため、未分化がんは、内視鏡治療に不向きで、通常の外科手術が行われます。
胃がん(早期がん)
早期がんは、粘膜層と粘膜下層までに拡がったがんということになります。そのうちの粘膜層までのがんならば、リンパ節転移や血行性転移はないと考えられています(報告によっては1.4%程度リンパ節転移があるとするものもあります)。ところが、粘膜下層まで拡がったがんは、リンパ節転移が、10~15%あるという報告があります。このことから、内視鏡でがんを切除して治療することができるのは、粘膜内までのがんで、リンパ節まで、切除する必要があるがんは、外科手術による治療が必要になります。
胃がん(進行がん)
病期
治療をする際の目安とするために、そのがんがどれくらい進んだものか(病期)でがんを分類する方法。「TNM分類」の「T」というのは原発のがんの広がり(深達度など)を、「N」はがん細胞のリンパ節への転移の有無と広がり、「M」は原発から離れた臓器への遠隔転移を意味します。このTとNとMの組み合わせで、病期(ステージ)を決定します。病期には、臨床分類と病理分類があります。
胃癌
日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約第 15版( 2017年 10月)」(金原出版)より作成
病理分類
手術後切除した部位を肉眼および顕微鏡を持ちていて、病理検査し、がんの拡がりを精査した結果を用いて分類したものです。
日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約第 15版( 2017年 10月)」(金原出版)より作成
胃がんの予後
胃がんの経過をあらわす目安のひとつに、生存率があります。少し前のデーターですが、以下のようです。
5年相対生存率で、I期94.7%、II期67.6%、III期45.7%、IV期8.9%
この結果から、ステージが軽いほど経過がよくなることがわかります。早期発見のために、がん検診を受けたり、病院で診察を受けたりすることが重要であると思います。